銀→青(短)
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その日の朝、ご飯にはスクランブルエッグが一品として食卓に並んだ。
『「いただきます」』
二人して声を合わせれば、鳴るお腹へと栄養を与える。
しかし、順調そうに進む食事もここまでだった。
「翼……何をしているのですか?」
メフィストは聞く。しかし、誰でも目の前で卵の塊をジィッと見られると、気になるのが当たり前だろう。
だからメフィストは聞いたのだが……。
『卵見る度思うのですが、鶏と卵はどちらが先に誕生したのでしょう?』
「は?」
翼は決して冗談ではなく本気で聞く。反対に、メフィストはため息をついた。
「やっと食事の際マヨネーズを私の所へ用意しなくなったと思えば、今度はそんなことですか。
翼も煩悩が減りませんね」
馬鹿にされているのは間違いないのだが、しかしそれでも翼は悩んだ。
『だってメフィストさん。鶏は卵がないと誕生しません。逆に卵も、鶏がいないと誕生しません。
これでは、結局どちらが先なのか分かったもんじゃないですよっ!』
妙に張り切る翼に、メフィストはやんわり諭す。
「鶏が先に決まってますよ。その鶏は技術者により開発されたのです」
『そうなんですか!?』
「はい☆」
『し、知りませんでした……。私、一生忘れませんっ』
メフィストは鼻を鳴らす。翼を騙したことが優越感を覚えさせ、更に自身を楽しくさせる。
しかし――
『でも、さすがはメフィストさん! だてに歳重ねてないですね!』
「……」
その一言で楽しい気分もどこか吹き飛んでしまった、メフィストなのであった。