銀→青(短)
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ある日珍しいことに、翼と燐が廊下ですれ違った。
「よぉ! 翼!!」
『あっ燐さん!』
振り向けば、そこにはいつもの笑顔をした燐。翼は小走りで駆け寄る。
『珍しいですねっこんな所で会うなんて』
「そういやそうだな! 寮も違うし、塾でしか会わねーもんな〜」
妙に子どもっぽい燐に、翼はクスリと笑みを浮かべる。
それを見た燐は不思議に思うも、しかし、それを見るよりも更に不思議に思うことがあった。
「な、なぁ翼……それって、翼の服なのか?」
『え?』
燐が”それ”と言って指したのは、メフィストとお揃いのあの浴衣。
何とも面白みのある浴衣をあの翼が着ているというギャップが、燐の中では上手く消化できなかった。
しかし、翼は笑顔で答える。
『これは、メフィストさんのです。私は隊服しか持っていないので……。
授業以外はこれを着ておきなさいと、メフィストさんが』
「へ?」
『優しいですよね! ずっと着ていたらボロボロになってしまうのに、それでも着ておけと言ってくれるんです!』
「……」
燐は何も言わなかった。しかし分かっていた。
メフィストがそのように言った、本当の理由が……。
「あの変態ピエロ……独占欲丸だしじゃねーか……」
内心、次犬として会った時は、思い切り首根っこを掴んでやろうと思った燐なのだった。