銀→青(短)
□03
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トントントントン……
『……』
トントン、グツグツ……
『……』
グツグツ、ボワンボワン……
『あの……』
ボワンボワン、ブクブク……
『ウ……ウコバクさん……』
翼は今キッチンにいる。メフィストの使い魔であるウコバクが料理するのを見ながら。だが……
『今日のそれ……一体何なのでしょう……?』
最初は歯切れの良い音を響かせていたのだが、仕舞いに雲行きが怪しくなり、今では赤黒い液体が泡を吹いている。
翼はこれが今日の晩御飯かと思うと多少気が引け、ため息と共に一言呟く。
『はぁ……久しぶりに食堂のおばちゃんのカツ丼が食べたい……』
「……」
『あっすみません、思わず……。そういう意味ではないので、気を悪くしないで下さい』
今の言葉はきっとウコバクに失礼だと思い、両手を振って否定する。
しかし、ウコバクは何も言わなかったので、きっと怒ってしまったのだろうと思い、翼はその場を離れることにした。
「……」
カチャン
しかし、ウコバクも火を止めキッチンを離れる。そして主の元へ駆けって行けば、あることをするのだった。
「はぁ? ”明日カツ丼を作っても良いか”だと?
別に構わない……しかし、私は毎晩オートミールでも構わないのだが?」
味覚の外れた主を無視するかのように、素早く頭を下げ退散するウコバク。
その顔が可愛く歪んでいることに、この主が気づくはずもなかった。
「何か勝負事でもあったか?」
翌晩、翼は歓声を上げてウコバクにお礼を言ったのだった。