銀→青(短)
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その日、メフィストはあることに気づいた。
「……ちょっと翼」
『はい、何ですか?』
「これ、いくら何でもやり過ぎではないでしょうか」
『……』
今、メフィストと翼は向い合って座っている。もちろん、いつものソファーにだ。
そしてメフィストが”これ”と言って指した場所は、テーブルの上だった。
それに対し、翼は少し気まずそうに答える。
『……だって、好きなんですもん……
チョコレートがっ!』
「……」
そのテーブルの上には、既にブロックチョコ2枚を制覇した痕跡がある。しかし、その既成事実があっても尚、翼は3枚目を口にしていた。
「太りますよ」
『あ、後で動きますっ』
「残念ながら黒い服は今、洗っています」
『こ、これでやりますっ』
”これ”とは、メフィストとお揃いの浴衣だった。それをメフィストが快く思うわけがない。
「……」
ガバッ
パキンッ
『あ〜!!』
「あっはっはー実においしいですねぇ〜☆」
『私のチョコーー!!』
顔をこれまでかというぐらい歪ませていた翼を足蹴に扱えば、メフィストはその後しばらく口をきいてもらえなかったらしい。
「あの、翼……」
『……』
その日以来、テーブルの上には常にチョコレートがあるのだった。