PP×戯言

□七章
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しかし、言葉を吐き捨てるだけではいけない。そもそも、零崎が公安局に出入りするようになったのは和音が原因なのだ。
その零崎に美佳が惚れたのは関係ないにしても、元をたどれば全て和音に繋がる。つまり、

殺人関係ならお手上げ
それじゃ、これで

というわけにはいかない、ということだ。つまり、何が何でも解決しないといけない。このバラバラ事件を……

『だけど、まずどっから説明するべきなんだか。そもそも、バラバラ事件の犯人は零崎双識。今回の事件の第一発見者……よりにもよってね。
ん?

¨¨よりにもよって¨¨?』

双識がいたその場で、丁度事件が起こった。偶然にも。
そう、偶然、偶々。
そう言えば簡単だ。偶々その場にいただけだからと言えばそれまでなのだから。しかし、本当にそうなのか。

¨¨私は被害者のアパートに用があってね、二階から二人の様子を見ていたのさ¨¨

『……』

二人の様子を見ていた?
用があるのに?
それこそ――

『戯言だ』

和音は思う。鬼の言うことをまともに聞くバカがどこにいる、と。
零崎双識は用などなかったのだ。そこにいた理由までは分からないが、何時もの通り時間を持て余していたに違いない。いや、百歩譲って用があるとしても、それは¨¨殺人現場を見学する¨¨用だろう。どちらにしろ、そこに正当な理由などあるはずがない。

『今回の容疑者、女とか言ってたけど……その女をあいつ(双識)が狙っていたか』

狙うと言っても、ただ女が魅力的だったからか、零崎に招き入れたくてかは分からないが。

『……いや、ちょっと待って。
そもそも、

なんで窪地美佳が殺される必要がある?』

確かに零崎人識と関わった。関わってしまった。しかし、それだけだ。双識がいかに弟を疫病神扱いしたとしても、人識が関わった人の全員が死んでいるわけではない。現に、一係は全員生きているし和音だって生きている。

『……あ』

ここで和音は思い出す。双識の言っていたあの言葉を――

¨¨私は話した人話した人にこう言っているんだ。髪を斑に染め、耳に携帯ストラップを刺し、顔面に刺繍を掘っている可愛い男の子に出会うことがあれば、関わらないどころか近づかない方がいい、とね。なぜだか分かるかい?
私は間違いなくあれの兄だが、それでも和えて言わせてもらうとすれば――零崎の秘蔵っ子と関わっていいことが起こることなど皆無に近いからだよ。いや、それだけならばまだ良いほうだ。逆に、あれと関わったせいで人生がめちゃくちゃになる可能性だって少なからず、むしろ殆どと言っていいほどあるわけだよ。それは、目の前で倒れているこの女性だって例外じゃないということさ¨¨

途端和音の口元が上がる。少しだけ分かった気がするのだ。
人生がめちゃくちゃになるということと死ぬことはイコールではない。それはつまり、

『例え殺人鬼関係にしても、窪地美佳が殺された理由は必ず存在するということだ』

それが、
ただ呼吸(殺人)をしたかったから
という理由だと双識に殴る蹴るの暴行をしてしまうかもしれないが、例え理由がどうであれ、殺人理由が分からないのは気持ちが悪い。


『――あぁ、もどかしい』


和音はこの時ほど、もう一度人識と話をしたいと思ったことはなかったのだった。
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