PP×戯言
□三章
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―携帯型審理診断、鎮圧執行システムドミネーター起動しました。ユーザー認証、唐之杜執行官、公安局刑事課所属、使用許諾確認、適正ユーザーです―
「……」
カチャ
―犯罪係数オーバー○○。刑事課登録執行官・任意執行対象です。セーフティーを解除します―
「……」
ぽろっ
その時、唐之杜は無意識と言うものを知る。
『…………唐之杜さん?
タバコ、落ちましたよ?』
「……」
『今、絶賛白衣焦げ中ですが、いいんですか?』
「……」
『……はぁ』
ダメだこりゃ
そう感じた時、プシュと音がして扉が開く。外から入って来たのは六合塚で、和音と唐之杜を交互に見るも中の状況が理解出来ないという顔つきをしていた。しかしそう思うのも、無理はない。
「唐之杜がドミネーター?珍しいこともあるものね」
『……まぁ、ね。ほら、唐之杜さん気分屋ですから』
「その気分屋は重い物が苦手と言っていたわ」
『奇遇ですね、私もです』
「いや、」
そうじゃなくて、と六合塚。
「普段パソコンしかつつかない唐之杜が、こんな長い時間ドミネーターを持ちあげておくなんて不可能よ。それとも、ドミネーターを持てば筋力アップとか、そういう機能が私の知らない内に増えたのかしら」
その言葉に、さぁ、と肩を上げて和音。
『何故か私が悪いように六合塚さんは言われてますけど、私何もしてないですからね?この監視カメラの中です、身の潔白は証明できますよ』
どうだ、と和音。
それを訝しげに見る六合塚。
その二人の視線は音はせずとも熱く、激しいものだった。
しかしここまでで何と無く分かったことだが、どうやら二人は重箱の隅をつつき合うような仲らしい。犬猿の仲、とまではいかないが、所謂、何か気になり気に食わないと言った言葉にするのも微妙な仲なのだ。ちなみに、何故そうなったのかと言うことは一切分からない。
『私は用事があるので失礼します。あ、唐之杜さんの腕と太ももに気をつけてください。このままいくと腕は筋肉痛だし、太ももは低音火傷ですよ。それじゃ』
「……どうも」
渋い顔したままの六合塚をそのままにして、軽い身のこなしでソファを立った和音は部屋を出る。頭の中では、先ほど双識がやらかした殺人現場を何とかしなきゃなーということを無機質に考えていた。無感情と言うのが早いか、無関心と言うのが早いか。それを判別しようにも、当の本人がいつもと変わらない顔なのだから判断がつかない。
しかし現在和音が、市民の平和を守る公安局に属する者らしからぬ思考だと言うのは、和音が発する次の言葉を聞いていただけたら分かるだろう。
『はぁ、めんどくさい』
言いながら外出許可を申請するとともに、お供を依頼するため朱へ電話をかけるのであった。