PP×戯言

□二章
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『って言っても、私は¨¨北¨¨に来すぎてしまったのかねぇ。もう街の明かりも何も見えないんだけど……』

単独行動を開始して、早20分。猪ではないがあれから常に真っ直ぐ進んでいると、そこはいつしか先ほどよりも明かりの入らない真っ暗闇となっていた。

『いやー、これは……襲われたらひとたまりもないな』

と、言いながらドミネーターを手に構えない辺り、和音はやはり度胸が据わっている。この風景を見る限り、成人した男性でさえも恐怖で慄いてしまうに違いないのに。

『だってそーっしょ』

この

『ここら一体本当に真っ暗で何も見えないけどこの感触……』

真っ暗な本当の闇の下を

『下は血溜まりだ』

見ている者は、今、二人。

『え、うへ!?』

和音が血の粘り具合を靴底で数度確認していたその時、背後から人の気配がしたと思い飛びのけば、自分がいた元の場所には何とも変わった形をした鋏が鎮座していた。鎮座、と言っても鋏が一人勝手に動くわけはないので、当然誰かが鋏を握って操っていることになる。では、誰が。

「うふ、うふふ」

『……へ?』

それは、誰か。

「うふ、いや、実に久しぶり!お兄ちゃんは君に会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて、いや、実際妹となるまでに一度でも良いから会っておいてみたくてついつい君の家まで足を運んでしまった!実にすまないことをしたよ弟も先に来ていたみたいだしねどうせなら兄弟揃って挨拶に来るべきだったとあの後すごく反省したんだ!あ、嘘だと思っているのかい?心外だ本当なのに!そうだな、俺のこのベトベトになった靴下を賭けても良い!うん、まぁそれでね、結局俺が何を言いたいかって言うと、

やぁ、さっきぶり」

『……』

この時、人間言葉を忘れると言うのは、まさにこう言う時のことを言うのだと、 和音は心底感じたと言う。
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