犬→ぬら

□04
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 そして、またキセルを口へ持って行く。吸うと、僅かながら煙が出た。


 その一連の動作から、陽菜はぬらりひょんを強い妖怪だと察した。弱いものほど向かってくるものだ。


 しかし、そうなれば陽菜にとってあまり良い状況にはならない。むしろ絶対的な降伏を余儀なくされているようで、陽菜は八方塞がりになってしまった。


 体は、緊張や恐怖といったものから動くことが出来ない。だが、口だけは元気に動くようだ。陽菜は逃げる算段を組ながら、ぬらりひょんの手の内を明かそうとした。


 『何か……目的があるんですか』


 「ん?」


 『奈落と関係……あるんですか?』


 口は回るが、滑舌はよくない。唇が震えているのか、先程から歯がカチャカチャと音を立てる。


 だが、陽菜は気にしないフリをした。弱みを見せれば、すぐにでも殺されそうな気がしたのだ。


 『先に言っておきますが……私は何も、持ってません……何も』


 「ふむ」


 『だから、私が元いた場所へと返してほしいんです』


 「ん〜」


 適当に相槌を打っているように見えたが、不可能なことは渋る様子を見せる。それを聞いた瞬間、陽菜は目をカッと開いた。


 そして――



 パッ



 手に持っていた膳を、離すのだった。


 
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