犬→ぬら
□02
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しかし、その時異変が起こった。
じゃぁ行くか、というその時。いつも河童が住家としている池が、静かに波紋を呼んでいた。
その異変に気づいたのは、もちろんその池の主・河童である。
「若!」
「……あぁ」
河童に呼ばれ、先導集団から抜けるリクオ。返事からして、リクオの中にも何かしらの疑念が湧いていたようだ。
「河童、池から出ろ」
「へい」
もしものことを想定し、河童を池から離す。そしてリクオ自身が池の目の前に立ち塞がり、帯に手を置いた。
余談だが、その堂々とした風貌に雪女・つららの頬が紅潮していたとか。
そしてその間にも、波紋は広がっていく。更にその中心部からは、ブクブクとたくさんの泡が出現した。
「若! 下ってくだせぇ!!」
危険を察知した青田坊が、リクオを後ろへ引かそうとする。しかしリクオは片手で制し、「下がってろ」と命じた。そして再び、池に集中する。
そして、運命の時――
ブク、ブク、ブク……
ブク、ブク……
ブク……
ザパーンッ
「!?」
それは、誰もが目を疑う光景だった。
いきなり水の塊が天を貫くように出現し、大きな水の壁が出来る。それによりリクオ始め奴良組総員がずぶ濡れになるが、そんなことは問題ではなかった。
「何だ……ありゃ」
その問題は、リクオの目をもくぎづけにした。
まだ勢いの衰えないその滝を、目を凝らしてよく見る。するとその中に、水ではない何かが埋もれていた。
「若! 凍らせましょうか?」
滝がある限り、”何か”の解明は不可能。つららは固形にして、まずはその正体の解析をと求めたのだ。
しかし、リクオは首を縦に振らない。ただジッと滝を見て、黙っている。