犬→ぬら

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 しかし、陽菜はかごめほど戦国時代へは行かない。それは陽菜自身が決めたことで、それほどに力を持たない自分がむやみに現地へ赴き足手まといになるといけないと思ったからである。

 そうして、月に幾度かに限り井戸を通ることに決めたのだ。そして今日はその幾度かの内の一日である。

 明日は休日なため、学校も休み。そのため、今回は泊まり込みで探索が出来ると、陽菜はやけに嬉しそう。

 陽菜はかごめのように学校を休んでまでは行けないため、泊まり込みというのは初めてに等しい。故に、危険とは分かっていても向こうで過ごす初めての夜にワクワクするのだ。


 『じゃ、行ってくるー!』


 臍を曲げた犬夜叉はどうやら先に行ったようで、もうその場にはいない。かごめもその後を追ったのだろう、あるのは凹んだ地面だけだ。

 よって今陽菜の側にいるのは、井戸を通ることが出来ない弟の草太のみ。陽菜はいつもの如く挨拶をし、草太の前から姿を消した。


 その後、誰もいなくなった井戸を見て「お姉ちゃん達ズルイなぁ」と草太が指をくわえて見たことは、これも例の如く、いつものことなのであった。



 だが陽菜は……いや、誰も知らなかった。



 陽菜にこれからどのようなことが起こるかなんて。

 陽菜にこれから、どのようなことが待ち受けているかなんて。



 まだ、誰も知らなかったのだった――。


 
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