銀→青
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しまった、と思った時はもう遅い。見ればメフィストは目を開けていて、驚いた表情で翼を見ていた。
「! 翼?」
何故か疑問形で尋ねられる。しかし翼は口角を緩く上げ、コクリと頷いた。
三日ぶりということもあってだろうか、メフィストはしばらくの間翼を見ていた。
『?』
見られる翼はどうすればいいのか分からず、頭を傾げる。するとメフィストは「あ」と言って姿を消した。
そして、しばらくして手にコップ一杯の水を持ってきたのだ。
「三日三晩何も飲まず食わずだったのです。これを飲みなさい。喋れるようになりますよ」
確かに、翼の喉はカラカラで声が出なかった。しかし……
『……』
体を動かすことも出来なければ腕も動かない。今の翼に水を飲むことは不可能なのだ。
「……あ、なるほど」
メフィストもそれに気付いたのか、コップを置いて翼の元へ歩み寄る。
「背中支えます。起きられますか?」
コクンと翼が頷き、行動に移す。誰かの助けがあれば動かせる体であったことに、メフィストは少なからず安心した。
「はい、良いですね。では、私がコップを傾けるので、ゆっくり飲んでください」
翼はコクンと再び。メフィストは翼の口へとコップを持っていく。
コクンコクン……
ゆっくりだが、喉の動きから見て確実に水を体内に入れている。そのことにまた、メフィストは安心を覚えた。