銀→青
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ビュオオオォォォ
「くっ!!」
いきなりの突風に、沖田は成す術もない。しかし、そんな中でもせめて、風の出所を見つけようとする。
見つければ即座に、風の当たる範囲からそれようと考えたのだ。
目を必死に開ける。風圧があまりにも強くて少しでも開ければ痛いが、しかし薄目ながら前を見る。
「……っ!」
すると、自分と同じように風を受けているはずなのに、今も悠々と翼を抱いてその場に立っているメフィストが見えた。
”人外の力を”
「! 本当だってのかィ……!」
嫌な言葉が頭を回る。本人は天人ではないと言うし、しかし人ならざる者だという発言もする。
今までは信じていなかったが、この場を目の前にすれば、嫌でも認めざるをえない。
カキンッ
「ほぉ」
メフィストは思わず声を上げる。それは、目の前の沖田が自身の刀を床に突き付けて、体の固定をはかったからだ。
「なかなかの妙案ですね。ですが……」
ビュオオオォォォ
「!?」
「これならば、どうですか?」
更なる風圧に刀がカチャカチャとなる。床に突き刺さっている部分も少しなので、すぐ抜けてしまうか、はたまた折れてしまうかのどちらかだ。
「くっ……!」
沖田は目を閉じる。悔しいが、これ以上の抵抗は出来ないと察したのだ。
「な、んででィ……っ」
そして歯痒い感情を全部胸に留まらせ、ただ、一言……
「翼ーーー!!!!」
自分が大事に想う人の名を、呼んだのだった。