銀→青
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ガシャーンッ
あられもない音が響き渡る。いつもは平穏無事なこのピンクの部屋に、巨大な砂埃が舞い上がる。
普段とは全く掛け離れた光景が、今ここなあった。
しかし、それを引き起こした当のアマイモンは、その様子を新作のお菓子が出た時のように弾んだ笑みで見る。
「翼ー早く立ち向かってきてください。僕は、退屈なことは好きではありません」
そして、一歩一歩、砂埃の中に足を進めた。
が、多少霧が晴れて視界が良好になったその時。アマイモンの目に写ったのは、思っていなかった事態だった。
「何やっているんですか? 兄上」
その目に写ったもの、それは――
「全く……アマイモンに殴られでもすれば、翼なんて一瞬ですよ」
翼を両腕の中に抱え、アマイモンの豪腕により一部屋分吹っ飛ばされたメフィストの姿があった。
「私だったからこの程度だったものを……」
しかし、そう言うメフィストの顔は目に真ん丸な青痣が出来ており、更には鼻血まで垂れている。
確かに、あのメフィストがここまでということは、人間である翼がその攻撃を受けるとどのようになるか、恐ろしい想像が出来る。
メフィストは、あの時全力で駆け出していなければと思うと、苦笑いと共に冷や汗が流れた。