銀→青
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断られるはずだった。”その命はお引き受けかねます”等なんなり言って、自分が翼を嘲笑うはずだった。
しかし、そうはいかなかった。
地の王を目の前にしても尚、誇りを曲げず忘れず、立ちはだかろうとしている。しかも、その元となる理由は単なる、
自分に命令された
というだけのこと。
断ろうと思えばそんなことなど簡単に出来るし、それこそ泣いてすがれば許してやるはずだった。
しかし、そうはいかなかった。
自己紹介をしてアマイモンの素性を知っているはずなのに、動くことはない。翼は決して、逃げることはない。
ただ真っ直ぐ、これから来るだろう痛みを待ち構えているのだ。一切の怯えもみせずに。
半ば自棄か?とも思った。しかし、それも一瞬で崩れ落ちる。翼は自分への謝罪と、己の武士道のためにそこにいたのだ。
――こんなはずではなかった。このままでは、本当に……。
ヒュンッ
その音を合図に、自分・メフィストは地を力強く蹴り上げ、これから差し迫る危険へと自ら足を運んだのだった。
そして、そこからすぐに響く、第二の音。
ガシャーンッ
室内なのに、何故か砂埃。
扉を開けていないのに、何故か隣の部屋。
地の王・アマイモンは日本の勉強は出来ていても、力の加減、というものについての知識は、全くの皆無なのであった。