銀→青
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”だった”
この言葉に、二人は真顔になる。聞かないが、事情は分かっているのだ。それを敢えて聞くことなど、そんな真似は二人はしなかった。
翼はもちろん、そんな二人の優しさに気づいていた。だから、笑う。
『ありがとございます。実はミツバさんは体の弱い方で……しかし、最後は唯一の血縁関係である沖田隊長に看取られていて……すごく、幸せそうでした』
「あの、さっき訪ねて来たって……一緒に住んでいるわけではないのですか?」
『屯所は隊士しか住むことは許されません。それにミツバさんは、お一人田舎に残られたのです。
私たちは武州で鍛えていました。ですが、江戸へ旗揚げしようという話に、いつか決まったのです』
「なるほど、そこに一人残ったんだな」一人呟く燐に、翼はホッと安堵の息。土方とのことはなるべくは伏せておきたかったのだ。
『しかし、そんなミツバさんが江戸へ来たのは、沖田隊長の様子見だけでありませんでした。
江戸へ、嫁ぎにいらっしゃったのです』
「「おぉ!」」の歓声。確かに、聞けば誰でもそうなる。かつての、自分だって……。
翼は顔を歪め、服をグシャリと握る。そして以降紡ぐ言葉には、まるで刺でもあるかの如く、吐き出す度に体の至る所が痛んだのだった。
『しかし、おめでたいこととはなりませんでした。結婚相手側は実は、自分が違法をやりやすくするために、ミツバさんを利用し、真選組の目を盗もうとしたのです』
ピシッ
燐の握るコップにヒビが入る。幸いまだ割れていないため怪我はないが、そうならないうちにと翼は素早く取った。