銀→青
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メフィストは項垂れる。もちろん、目の前にいるアマイモンにはそんな態度は見せないように。
タンッ
先ほどまで銃の役割をはたしていた傘は、今はもうただの傘に戻っていた。その”ただの傘”の先を、メフィストは勢い良く床に押し付ける。
まるで、何かの区切れでも示すように……。
「兄上?」
「お前は何も気にしなくて良い。これは……私がもう一度練り直す。
それより、お前は奥村燐に集中しろ。そろそろだぞ?
お前が奥村燐を本気にさせる日は……」
意味あり気に語る兄に、弟はものともしない口調で言う。ただ一言、「はい」と。
その聞いているかないかの高い声に、メフィストはまたため息を一つつく。そして、何を考えるべきか分からない目を、もう明るくなった外に向けるのだった。
そうして、いつもより長い悪魔兄弟の密談は終わりを告げた。大きなケーキ、丸々一個をたいらげて――。
―――――――――
さて、あれから翼達はどうなったかというと……。
『……』
ネイガウスはとっくに自室に戻り、そして翼は、仰ぎ見ても何も見ない天上を意味もなく、しかしいつまでも見つめるのだった。
『メフィストさん……』
その日は結局、翼がメフィストの姿を見ることはなかった。