銀→青
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しばらく歩くと、そこはどんどん見知った風景になる。そして、ついにはいつもの見慣れたドアの前。
コンコンッ
「私だ」
「入れ」
小さな声だが確かに聞こえた、中からの声。だが、いつもとは違うその口調に、翼は耳を疑う。
しかし、聞き間違えるわけがない。なぜなら、この声は確かに……。
カチャ
「どうだった、奥村燐の力試しは」
『メ、メフィスト……さん……』
いつも笑顔とウィンクで翼に接してくるメフィスト・フェレスだったのだ。
「……」
「……まぁ、答えられないのは無理もないか。私情に走った挙句、何の成果も得られなかったのだからなぁ」
ネイガウスにメフィストはジリジリと言及する。その間、ネイガウスは何も言わない。
なぜならば、メフィストの言うことは全て事実。言い返す言葉もなかったからだ。
メフィストに監視されていることは百も承知だったネイガウス。そのため、今このように言われようが逃げることはしない。
つまり、こうなることを知っていてネイガウスは、先ほどのような行動を起こしたのだった。
メフィストは続ける。
「無言、か。まぁ無理もないな。だが、言い訳をしないその心意気は大変結構。
だが……」
シャキン
『!?』
「忘れていないか? 私も、お前が敵視する部類に入っていることを……」
そして、いつの間にか手に持っていた傘の先を、ネイガウスに向けたのだった。