銀→青

□25
2ページ/10ページ



しばらく歩くと、そこはどんどん見知った風景になる。そして、ついにはいつもの見慣れたドアの前。


コンコンッ


「私だ」


「入れ」


小さな声だが確かに聞こえた、中からの声。だが、いつもとは違うその口調に、翼は耳を疑う。


しかし、聞き間違えるわけがない。なぜなら、この声は確かに……。


カチャ


「どうだった、奥村燐の力試しは」


『メ、メフィスト……さん……』


いつも笑顔とウィンクで翼に接してくるメフィスト・フェレスだったのだ。


「……」


「……まぁ、答えられないのは無理もないか。私情に走った挙句、何の成果も得られなかったのだからなぁ」


ネイガウスにメフィストはジリジリと言及する。その間、ネイガウスは何も言わない。


なぜならば、メフィストの言うことは全て事実。言い返す言葉もなかったからだ。


メフィストに監視されていることは百も承知だったネイガウス。そのため、今このように言われようが逃げることはしない。


つまり、こうなることを知っていてネイガウスは、先ほどのような行動を起こしたのだった。


メフィストは続ける。


「無言、か。まぁ無理もないな。だが、言い訳をしないその心意気は大変結構。



だが……」



シャキン



『!?』



「忘れていないか? 私も、お前が敵視する部類に入っていることを……」



そして、いつの間にか手に持っていた傘の先を、ネイガウスに向けたのだった。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ