銀→青
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一方、ネイガウスの後を追って屋上を離れた翼。来た時とは違い、僅かな朝日に照らされそこは少しだが明るかった。
「……」
『……』
トントンと軽快に響く足音とは反対に、翼も、そしてネイガウスも何も言わない。
お互いに静かな時間が流れていた。
しかしその時、一つの声が……
「燐!?」
しえみだ。
「ネ、ネイガウス先生!? 神崎先生も!
って、ネイガウス先生お怪我を……!!」
急いで治療しようと駆け寄ってくるしえみを、ネイガウスは一喝する。
「放っておけっ」
その重い声に、しえみは立ち止まってしまう。ネイガウスはその横を通り、そしてまた翼も、静かにしえみの前を通る。
しかし、完全に通り過ぎるその前に、翼はしえみにあることを言う。それは……。
『燐さんと雪男さんは屋上です。早く行ってあげてください。特に、燐さんは深手を負っています』
「え!? わ、わかりました!!」
衝撃的な言葉に、今すぐにでも動く足。しえみはものの数秒で姿を消した。
『……』
それを黙って見送る翼。遠くの方で「燐!」と呼ぶしえみの声が聞こえれば、小さな声で呟いた。
『お願いします、しえみさん』
そして、小走りでネイガウスの後を追ったのだった。