銀→青
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『す、すみませんでした!!』
ガバッと頭を下げて謝る翼。その姿を見て、メフィストはゆっくり話す。
「それは何に対して、ですか?」
怒ってはいないが少しの呆れを含んだ声色。それを聞けば翼は、自分の心情を長く語った。
『メフィストさんを出し抜いて部屋を抜けたことです……。
私、怪我をしてもどうしてもジッとしていられないんです。
仕事が気になるのでよく自室からも抜けてたのですが……その後は必ず、こうやって怒られてました』
そしてもう一度『すみません』と謝る。しかしその時、メフィストから意外な言葉が聞こえたのだった。
「怒る? 私は怒ってなどいませんよ?」
『へ?』
思わず顔を上げる。するとそこには、いつもの笑顔のメフィストがいた。
「だから、怒っていません。外が気になるのは仕方ないことでしょうしね☆」
『……』
その時、果たして翼には分かったのだろうか……
悪魔の糸引きが。
「どうしました?」
『いえ……いつもメフィストさんは優しいですが……今日は一段と……』
その言葉に、メフィストは組んだ手で口を隠して笑う。
「優しい私は嫌いですか?」
『い、いえ!! ただ、悪いことした後に怒られないことが……少し居心地悪いだけです』
「そんなこと気にしないでください。ここは法度で縛り付けた所ではありません。それとも、
怒られたいですか?」
翼は無言で、ただ、頭を左右に振った。