銀→青
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飲み物名を告げた途端、メフィストはいつもの手の形をする。
その姿から、魔法ですぐ出すつもりなのだと確信した翼は、急いで”手作り”と要求する。
もちろん、時間稼ぎである。
「仕方ないですね! では”メフィスト特製グリーンアップルティ”を作りましょう☆」
『はい! ありがとうございます!! 楽しみにしてますねっ』
しかし翼が言い終わった後、メフィストはもういなかった。
さっそくキッチンに行き、作り始めているようだ。
それを見て心の中でごめんなさいと呟きながら、翼はこっそり部屋を後にする。
パタンッ
『ふぅ〜』
そして無事脱出が完了すると、ある部屋を目指して歩いたのだった。
一方、部屋に一人残されたメフィスト。鼻歌を歌いながら呑気にグリーンアップルを捌いている。
「〜♪」
このメフィストの行為のおかげで翼は難を逃れたわけなのだが……
しかし果たして、あのメフィストが人間一人の動きを把握出来ないなどということがあろうか。
もしこの答えを、あの雪男が解くとすれば……。
きっと雪男は迷わず、そしてはっきりとこう言うだろう。
把握出来ない、わけがない――
と。
すると、今鼻歌を歌っているメフィストは、なぜ気づきながらも放置するのだろうか。
何故、翼を泳がすようなことをするのだろうか。
それはいつものことながら、メフィストにしか分からないのだった。
「〜♪」