銀→青
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一方、自前の勘で何とか外へと出ることが出来た翼。
周りに誰もいないことを確認すれば、鞘から刀を抜いた。
カチャ
『……久しぶり』
ここへ来て何度かこの刃を見てきたが、殺意を持って見たことは一度もない。
悪魔を滅した時も、勝呂に向けた時も。
最近になって本気で刃を合わせたのは、やはりあのことだ。
『……伊東……』
翼は拳を握り締める。あまりに力を入れてしまっている手は、どうやら震えているようだ。
しかし、無理もないだろう。
伊東は昔から独走するタイプだったと言えども、翼にとっては掛け替えのない仲間なのだ。もちろん、真選組皆にとっても。
『……』
翼は黙祷する。仲間や市民が亡くなった時は、いつもこうして弔っていた。
局長を無事1車両だけの列車から救い出し、パトカーに乗せた時、沖田が”こっちに来てくだせぇ”と言った。
言葉に甘えて乗り移れば、そこは何とも口を覆わざるを得ないような光景が待ち望んでいた。
敵の確認と車両を渡っていれば、1車両において何かが違っていた。
ガラリとドアを開ける。するとそこには……
見知った顔・日頃から仲間だと思っていた物たちの、累々と転がる屍があった。
『!!』
翼は息が出来なかった。
まさかここまでの反乱者がいることも、まさかここまでの犠牲が出ることも、予想していなかったのだ。