銀→青

□14
2ページ/13ページ


一方、自前の勘で何とか外へと出ることが出来た翼。


周りに誰もいないことを確認すれば、鞘から刀を抜いた。


カチャ


『……久しぶり』


ここへ来て何度かこの刃を見てきたが、殺意を持って見たことは一度もない。


悪魔を滅した時も、勝呂に向けた時も。


最近になって本気で刃を合わせたのは、やはりあのことだ。


『……伊東……』


翼は拳を握り締める。あまりに力を入れてしまっている手は、どうやら震えているようだ。


しかし、無理もないだろう。


伊東は昔から独走するタイプだったと言えども、翼にとっては掛け替えのない仲間なのだ。もちろん、真選組皆にとっても。


『……』


翼は黙祷する。仲間や市民が亡くなった時は、いつもこうして弔っていた。



局長を無事1車両だけの列車から救い出し、パトカーに乗せた時、沖田が”こっちに来てくだせぇ”と言った。


言葉に甘えて乗り移れば、そこは何とも口を覆わざるを得ないような光景が待ち望んでいた。


敵の確認と車両を渡っていれば、1車両において何かが違っていた。


ガラリとドアを開ける。するとそこには……


見知った顔・日頃から仲間だと思っていた物たちの、累々と転がる屍があった。


『!!』


翼は息が出来なかった。

まさかここまでの反乱者がいることも、まさかここまでの犠牲が出ることも、予想していなかったのだ。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ