銀→青
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それは恐らく、メフィストさえも見たことがないような、そんな笑顔。
「……」
「メフィスト? どうかしたのか?」
「……」
先程、翼のあまりの恐さについメフィストを楯にしてしまった燐。それ故、メフィストは今燐の腕の中にいるのだった。
一方、抱き抱えている犬が急に震え出したことに気付いた燐。
しかし問うても返ってくるのは沈黙ばかりで、原因が一向に分からない。
燐は一つため息をつけば、また翼の方を見たのであった。
『私は、あなたの大事なものを守るお手伝いをしたい。
力不足だとは思いますが……』
二人の会話はまだ続く。勝呂は素っ気なく目を逸らし、若干口ごもって言葉を紡いだ。
「勝呂竜士」
『っ……はい』
いきなりのことで戸惑ったが、翼はその言葉を自己紹介だと受け取り、更には”これからよろしく”という意味が含まれているのだと理解出来た。
柔らかな空気がその場に漂い始めた時、新たに二つの声も加わる。
「三輪子猫丸言います。これからよろしゅうお願いします、先生」
「志摩廉造です。よぉ見たら先生可愛いなぁ。ちなみに彼氏おるん〜?」
翼は困った顔で『よろしく』と言えば机から降り、志摩をどやっている勝呂を見た。