銀→青
□02
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「ふぅ」と紫煙を吐き出し、一息つく土方。沖田は黙って見るも、いつものように生意気な表情を浮かべている。
「……何だ」
どうも居心地が悪いので問いただせば、沖田は「いやね」と言って続けた。
「土方さんはいつも卑怯だと思いやしてね」
「……」
挑発的な意味が含まれているのはもちろん分かっていたが、土方はそれを気に止めることなく沖田に背を向ける。
「しばらく、翼のこと、頼む」
そしてそれだけ言い残せば、土方は一人で帰路へとつくのだった。
しかしその時。
土方の耳にどこからか聞き覚えのある声が届いた。
「……翼?」
しかし、辺りを見回してもどこにも翼の姿は見られない。
聞き間違いだったかと思えば特に気にすることもなく、土方はそのまま足を進めたのであった。
翼が行方不明だと騒がれるのは、もう少し、先の話――。