銀→青

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そして、だからこそ、今回の伊東の企みは許せなかった。何人もの部下が死に、何人のもの部下が傷ついた。


挙句の果てには、局長である近藤までもが危ない目に合い、上司である土方にも列車事故という危険が及んでしまった。



翼は唇をギリっと噛む。多大な被害を及ぼした伊東を、翼は睨むように見た。



「そんなに喰いしばると、唇切れやすぜ?」



すると、横から急に声が聞こえる。一番隊隊長、沖田総悟だ。



沖田も致命的ではないが、近藤を逃がすために戦った時の生傷が至る所にあった。



翼はそれを見て、更に唇を噛み締める。すると、



「あーあ、言わんこっちゃねーや」



沖田の言ったとおり、翼からは鮮やかな赤が一筋、流れ出たのだった。



ツーと流れる血をそのままに、翼は言葉を紡ぐ。




『構わない。皆が受けた痛みに比べれば、こんなこと……何てことないもん』




言葉の中に少しの大人っぽさと、未だ残るあどけなさが垣間見える。その様子に、沖田は少し微笑んだ。



「結構な部下思いなこった」



しかし、それを受けた翼は笑うことはなかった。未だ微動だにしない土方達から、目を逸らさない。


それはどうやら沖田も同じだったようで「そろそろですぜ」と言ったきり、もう何も言わなかった。

 
 
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