銀→青
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燐はしばらく、遠くで二人を見守ることにした――。
『メフィストさん……答えてください……っ』
「……」
『メフィストさん!!』
このように翼から強く言われるのは初めてかもしれない。その戸惑いもあれば、何と言って説明するのがいいのかも分からない。
ここまで来ても素直に言葉を吐けないメフィストは、今はただ黙るしかなかった。
『……っ』
メフィストのその態度を、今の翼が許すはずがない。お腹を刺されているにも関わらず、メフィストの腕の中から飛び出し距離を取る。
ズサッ
さすがに立つことは出来ないので、足で体を支える。
しかし、ここまで動いても翼は痛みを表情に出さなかった。きっと、興奮作用のあるアドレナリンが体中に出過ぎているのだろう。
現に血はジワジワと隊服を床を、血で染めていく。この分だと長期戦は命取りだ。
しかし翼は退かない。まるで今が全てだと言わんばかりに、地に根を張り、メフィストを射ぬく。
そして、そのまま開口した。
『塾生の昇格試験の際……私はある気配を感じました。その気配は、私にとってとても懐かしいものでした。
そしてその懐かしさは、扉を通して伝わりました。まるでその向こうに、会いたい人がいるみたいに』
「……」
『もう一度聞きます。メフィストさん、
私の世界の人と、この世界であったのですよね?』
不安で、期待で、光って、霞んで……
そんな眼差しを向ける翼に、メフィストはもう口を閉じておくことは出来なかった。