銀→青
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「燐ー!!」
「ぬぅおぉッ!?」
ガバッと起きるは奥村燐。高杉に斬られ蹴られしたせいで、今まで気絶していた男だ。
「……!
そうだ! あいつは!?」
しばらくボーッとしていたが、記憶を辿って高杉を思い出す。燐は素早く体勢を整え、辺りを見回した。
しかし、既に元の世界に戻った二人を見つけられるわけがない。燐は頭を捻る。
すると、しえみが今まで起こったことをかい摘まんで説明し始めた。
「あの人達なら、もういないよ。扉の向こうに行ったの。でも……神崎先生、お腹刺されちゃったの!」
「な……!?」
燐は急いで翼を見る。するとメフィストに抱えられて見えにくいが、確かに”赤”の色を捉えることが出来た。
「翼!」
立ち上がり、駆け寄ろうとする燐。しかし、それは細い腕により叶わなかった。
「な、しえみ?」
その腕の主・しえみに、何の用だと言おうとする。だが、しえみの複雑な表情を見るとその気も失せた。
「どうしたんだよ?」
「あのね、今……神崎先生は……」
「……」
のろりのろりと声を出す。その背景にはどこか言いにくそうな部分があって、燐も思わず聴き入った。
だが、その時――
「ここに、私の世界の人が来たって……本当なんですか……?」
「!?」
翼のその声を聴いて、燐は確信する。
ついに打ち明ける時が来たのか、と。