銀→青
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『それに』
翼は続ける。
『女など、この剣を握った時に捨てた』
フッと自嘲気味に笑う翼は、メフィストの心をほのかに痛めた。
メフィスト達からは、木々の間を縫って翼達の姿を見ることが出来るのだ。当然、塾生たちは木にへばりついて凝視している。
燐にいたってはまだ気絶中だが、高杉に切り付けられた傷は、血を残して既に塞がっていたのだった。
「ふ、そんな格好して”女を捨てた”とはねぇ。じゃぁ今のお前は何だ?」
『スカートは上の命令だ。それに性別に関係なく、私は真選組の隊士だよ』
ニッ
翼は笑う。そして、高杉も。
後ろで万斉が「始まるでござるな」と言ったことを合図に、両者一歩を踏み出した。
相手を、殺さんとするために――。
ガキンッ
『今回のことで、お前ら鬼兵隊には更なる罪がかかった!』
キンッ
「俺らの罰は変わりゃしねー。捕まれば即打ち首だ」
カンッ
『ハッ! 誰がそんな生温い刑を!!
お前らにはたっぷり礼をしたいんだ!』
翼は瞬時に間合いをとり、黒板の粉が落ちるシルバーの上を手でなぞる。
すると、あまり掃除をしていなかったのだろう。少し滑らせただけで翼の手には大量のチョークの粉が乗った。
それを素早く高杉に投げ、視界を曇らせる。翼の予想通り、高杉は異様な物体に、目を一瞬翼から逸らせた。