銀→青
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塾生が木で覆われた時、高杉の後ろで控えていた万斉が思わず驚く。
「ふむ。この世界には不思議な力があるのでござるな」
翼は振り向かないが、万斉の言葉から、しえみがきちんと壁を作ったことを悟る。皆を巻き込まないように出来たことで、翼は少なからず安心した。
だが、本番はここからと言ってもいい。
「さっきより元気になったみてぇだが?」
高杉は翼を見て言う。翼は何も言わないが、しかし見ると本当にそうだ。
さっきは息をするのもしんどそうだったが、今は普通に立ち、呼吸も乱れていない。何の変化が起こったのか、と思ううちに、翼はニッと笑った。
『案外、日頃隊服を重くしておくのも、悪くないってことだ』
高杉には見せないが、お腹辺りをパンパンと叩く。すると微かに金属音が聞こえる。それは、いつかメフィストの洗濯機を壊した大量の短刀だった。
短刀により、高杉の刃を極力まで浅くすることに成功していた翼。だが、相手の見方を伺うため重傷のフリをしていたのだ。
「敵を欺くには、まず味方からってか。存外悪ぃ女じゃねーか」
『燐さんには悪いことをした。だが、燐さんなら大丈夫だ』
翼がそういうのも、いつか燐が「怪我が化け物みたいに早く治った」と言っていたのを覚えていたからだ。
しかし塾生には内緒のため、”タフだから大丈夫”というニュアンスを含めた言い方をする。