銀→青
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隠れてやっているのかもしれないな
翼ならありえないことではない。いや、むしろ翼だからこそありえることだろう。
「にしても、筋トレをあれほどに楽しそうにやるとは。さすが翼だな」
もしや今日の見学は無駄に終わるかもしれない。
そうメフィストが思ったその時、思考は180度回転する。
「招かざる客再び、か。今度は誰なんだろうなぁ」
メフィストは、ニッとまた嫌な笑みを浮かべ、笑う。
しかし、
『はい、終わりです』
「……」
自分と同じ場に翼がいることを、すっかり忘れていたのだ。
「しまった! ここに現れてもらっては困る。翼が、向こうの世界とここが繋がっていると知ることになる」
「止めなければ!」と意気込み、翼の元へ行く。まずは翼を廊下に出そうとしたのだ。
タッタッタッ……
自分が走っている間も、異様な気配はどんどん濃くなっていく。それはまさしく、翼の世界の人がこちらに近づいている証拠だった。
『次は腕立て伏せを、』
間に合うか
「チッ!」
これから、きっと自分の予測したこととは違うことが起こってしまうだろう。予想に反するそのことに、メフィストは苛立ちを覚える。
『では、やりましょう』
焦りも覚える。
『1ー』
不安も覚える。
『2ー』
キィッ
だがそれは、
”向こうから来る人物が、翼の味方である”
という先入観があっての感情だった――。