銀→青
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「翼ー? そろそろ塾の時間なのでは?」
ある日の夕方。
理事長室では優雅に紅茶を啜る音と、その場を忙しく駆け回る足音が響いていた。
『わ、わわ、今すぐっ』
バタバタと駆け回るのは、もちろん翼。今日もあのひそかに重い隊服を来て、今、例の鍵で部屋を出ようとする。
しかし、メフィストはすぐに止めた。
「ちょっと翼! 今日は武体刀実技なのでしょう? 刀忘れてますよ!」
『へ!? あ、焦っててつい!
わわ、遅れちゃう! それでは!!』
バタンッ
「全く、世話が焼ける。前はトイレにまで持って行ったというのに……」
一気に静かになった部屋は、ほんの少しだけ寂しさを覚える。が、メフィストはすぐ犬の姿になり、器用にドアを開け、教室へと行ったのだった。
教室に行くともう授業が始まっており、いかに翼がギリギリにここに着いたかが分かる。
いや、もしかしたら遅れたのかもしれない。メフィストはまた、ため息が出た。
すると聞こえる、翼の声。
『まず、今日は基本的なことから。体を動かすことに慣れるましょう。今から筋トレをします』
しかし翼の講師力というのは安定したものがあって、塾生も従順に翼の言うことを聞いていた。
『はい、あと10回!』
そう言いながら、翼も筋トレに参加する。
が、塾生との力の差は歴然としているもので、あの燐や勝呂よりも早く終えていた。