銀→青(短)
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しかし――
「だから、何してるんでぃ。
翼が握るのは、こっちでさぁ」
ギュッ
丸太は沖田が、翼の空いた手も沖田が塞ぐ。翼は戸惑った。
『あ、あの……血……』
見れば、なるほど。確かに今や沖田の手の平も翼の血一色である。
だが、沖田はそれを見ても何も言わない。いや、言うことよりも行動で返答をした。
ギュッ
繋がった手に力が入る。それは嬉しいことだが、今の境遇にある翼にとってはあまり良いものではなかった。
『っ!!』
傷が、疼くのだ。
しかし、沖田は翼の歪む顔を見ても握ることを止めようとはしない。強さをそのままにしておけば、翼を見ないままに話したのだった。
「痛いか?」
『……は……ぃ……』
「そうかぃ。
質問がありやす」
『な、んでしょう……?』
沖田は、手を握る反対の手を挙げる。すると自然と丸太が持ち上がるわけで……。
「これと、今と……どっちの痛みがいいですかぃ?」
『! ……』
ギュッ
翼は何も言わなかった。しかし、痛む手を無視して沖田の手を握り返せば、もう泣くことはない。
「そうかぃ」
その翼の姿を、どこか満足そうに見る沖田。
ただ一言呟いた後は、二人が織り成すシルエットをただひたすら見ながら、そして、
ただ無意味に長い時間をかけて、帰路へとついたのだった。