銀→青(短)

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『ふんっふんっ……』


「あと50回でぃ」


『ふん……つっ!』


カラン


その音とともに、翼の手から握る部分だけが細い大きく重い丸太が転がり落ちた。


『はぁはぁ……っ!』


翼が時々顔を歪めるのは、10歳という小さな手から規則正しく出来た血豆が、全ての皮を破り血を出していたからである。


『はぁはぁ……』


「……」


しかし、沖田はそんな翼の姿を見ても何も言わず、ただ黙っているだけである。


反対に翼は、暗黙の了解ではないが沖田が何を言いたいのか分かっていた。


そのため、握る部分にいくら血がつこうがそれでも持つように必死に努めたのだった。


しかし……


『つっ!』


カラン


破れた皮から覗く我が身と木がすれ違う度、どうしようもない激痛が遅ってしまい、木を持つことももう叶わなかったのだ。


『……沖……さ……』


翼は仕方ないギブアップを沖田に訴える。沖田は地に手をつく翼を見て、声低く話した。


「どうしたんでぃ?」



”もういい”、”もうやめろ”。



そんな言葉がこの男から聞こえてくるはずがない。分かってはいたものの、翼はどうしようもない心の痛みを抑え切ることが出来なかった。


『……っ、ふ……ぅっ』


思いは涙となり地を濡らす。しかし、それでも沖田は翼の望む言葉を言わない。


「立て」


『!! ……っ……』


「立てって言ってんでぃ」


『……っ!』


沖田の言葉に、涙を流しながら首をブンブンと横に振る翼。


沖田はついに眼光を鋭くした。




「立てって言ったんでぃ!!」




『!!』



いきなりの怒声に、翼は震える足に無理矢理喝を入れてその場に立つ。もちろん、あの重い丸太も痛さ我慢で無理矢理持った。


「何してんでぃ」


しかし、それでは沖田は満足しない。翼はこれから迎える激痛を覚悟して、重い丸太を振りかぶらんと上へ持ち上げた。

 
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