銀→青(短)
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その日、翼はまたもやメフィストの部屋へ来ていた。
”またもや”と言っても翼が来るのは久しぶりで、メフィストも表には出さないが顔に嬉しいと書いてある。
つまり、久しぶりの二人の時間なのだ。
「翼ー! ウコバクが作ったご飯、食べますか?」
『はい!』
そして二人席に着き、「『いただきます』」の合図で食べはじめる。今日のメニューは夏の風物詩とも言える冷し中華だ。
『わぁ! すっごく美味しいですっ』
「そうですね。やはり夏と言えばこれですね☆」
感想を交えた会話が二、三度飛び交う。しかし、その時――
『あ、風物詩と言えば! メフィストさん、新聞ありますか?』
「はい、棚の上に……翼?」
メフィストが場所を言えば、『ちょっと失礼します』と翼は席を立つ。そして新聞の元へ向かった。
実は、今日の夜は翼の好きな心霊特集がするのだ。朝屯所で確認をしたから間違いない。
『えっと〜』
若干鼻歌交じりでテレビ欄を凝視する。すると何と奇跡なことか、こちらでも似通っている番組があったのだ。
『!』
見つけた瞬間、翼の心は跳ね上がる。イソイソと、そのまま番組内容を確認した。
夏の心霊特集
▽恐怖の心霊写真50
▽身の毛もよだつ実話ドラマ
▽行ってはいけない……心霊スポット
『〜っ!』
堪らない!
翼の脈拍は異常なほどに跳ね上がる。しかし、それも一瞬。それは、最後の項目を見た時……。
▽悪魔はこう払え!祓魔師による払い方講座
『……』
翼の顔は一気に真顔になる。すると新聞を若干手荒に畳み、再び席へ戻った。
「……翼?」
当然メフィストは、翼の一連の行動が気になる。しかし翼は表情をパッと変えて、笑顔を浮かべた。
『メフィストさん! ご飯食べたら映画見ませんか? 私持って来たんですっ』
「おや、いいですねぇ☆」
急な話題に驚くも、その誘いが嬉しかったのか二つ返事をするメフィスト。そのメフィストを見て、翼もどこか嬉しそうに笑った。
その後は今は手元にない映画の話で盛り上がり、二人満腹になるまで冷し中華を堪能する。
そして、久しぶりに味わうほのぼのした二人の時間も、風物詩と同じように美味しく堪能するのだった。