犬→ぬら
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その後、陽菜は膳を全て平らげた。時間は掛かってしまったが、それでも完食したのだ。
そして、今はあることに悩んでいる。それは……
『これ……持って行って返した方がいいよね……?』
”これ”とは、空っぽの膳と、首無が掛けてくれた羽織りである。だが、陽菜は台所がどこにあるかも知らなければ、首無がどこにいるかも分からない。それに、一応あの言葉も聞いている。
”中庭なら大丈夫か! 中庭でも散歩してて!”
この言葉は、返せば”中庭以外はうろつくな”ということ。釘を刺された手前うろつくのもどうかと思ったが……
『偵察は、必要でしょ』
襖をこっそりと開けて、台所と首無を捜すのだった。
さて、それから数分。陽菜は屋敷を練り歩いていたが、この数分であることに気づく。
『ねぇ、何でこんなに妖怪の気配が強いの?』
それはいつしか花開院ゆらも感じていたことだった。
姿は見えないが、気配がある。それはまさしく、妖怪が隠れているということを指していた。
『困ったなぁ。弓矢は背中にあるけど、膳で両手が塞がっちゃってるし……襲われたらどうしよう』
半ば洒落にならないことを言いながら歩く。言った通り、弓矢はベッドの横にあったため今は装着している。何かあった時の護身用だ。