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□50
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新゛撰゛組――



あぁ、副長。


今思えば、あなたはなんて利口な使い方をしていたのだろう。




50:要は、考えよう



「屯田」


『はい』


「お前はどうしたい? 自分を拒み、死にたいか?」


『……』


彩乃は頭を下げ続けていた。しかし、そんな時に副長から言われた、その言葉。

しかし数日前も今も、彩乃はきっぱりと答える。その内容は、違っているかもしれないが――



『いいえ、生きたいです』



「っ!」

この答えに、沖田の空気が揺れたのが分かった。

喜んでくれているのだろうか

そんなことを思いながら、彩乃は頭を上げない。そして次に、

もしこれを言えば怒るだろうか

と思いながら、進言した。


『提案が』

「話せ」


『はい。俺は一番隊に残ります。しかし――もしも新選組が危機に追いやられる時があれば、その時は特別編成として、俺をお使いください』


「「!?」」

「……」


あっちの土方は賢かったぞ。

さぁ、

こっちの土方はどうなんだ。


彩乃の中で期待が多くなる。もちろん、その裏にある不安に気づかなかったわけではない。敢えて見逃すのだ。


役に立ってこそ、価値があるのだと。


『俺は基本死にません。急所は心臓ただ一つ。怪我をしても治癒します。

そんな俺を、どうか新選組のために使ってください。俺は、あなたたちの役に立ちたい……』



今度こそ、

俺はあなたを護りたい――沖田組長



『……』

「……」


土方は悩んでいるようだった。しかし、口にする言葉を聞けば、彩乃のことを心配しているわけではなかった。


密偵として送るか、
新選組とはまた違う組織として送るか、
はたまた――



『――』



この呟きが聞こえた時点で、彩乃は更に頭を下げて「有り難き幸せ」と言ったのだった。その時の表情は分からないが、多分、笑っていたと思う。



――――――



『失礼しました』



パタン



彩乃には、明日から通常隊務という指示を最後に、局長室から退出させた。しかし、彩乃が出た後も三人は部屋で静かにしていて、誰ひとり口を開こうとしない。

すると、またもや沖田が切り口をかって出た。


「土方さん! どういうことですか!? 何であんなこと言っちゃったんですか!!?

いくら彩乃さんが頑丈だからって、それはあんまりです!! すぐに撤回してください! 彼は普通の隊士と変わらないと!!」


いつもの沖田ではない、動揺した沖田に、土方は目をやるだけだ。そして、近藤は沖田を少しだけ諌めた。


「総司、落ち着け。まずは、トシの見解を聞こう?」


「先生」と声を落とし、沖田は素直に頷く。そして、二人して土方に目をやれば、土方の見解を待った。

しかし、土方は二人を一瞥すればニヤリと笑う。そして――



「使えそうだから使う。
使えるものは使う。

屯田は使えそうだった、だから使う。

何か異論はあるか?」


「……」

「な!?」


沖田は反発しようとする。しかし、次の土方の一言で収まるのだ。


「屯田が言ったんだ。新選組が危険な時に使ってくれってな。新選組が潰れそうな時に、お前は隊士の命の心配をすんのか?」


「! ……っ」


「しねぇだろ? そういうことだ。分かったか、総司。それに――


神谷!」


「「え!?」」


「どうせ盗み聞いてんだろ! 出てこい!」


すると、沖田が座っていた後ろのドアが開く。見ると、土方の言う通り、涙を流しながら謝る神谷の姿があったのだ。

そしてこの時から、沖田は途端に黙る。組長である自分が揺れれば、神谷も更に動揺してしまうと分かったのだ。


「ったく、本当にお前は泣くことしか能がねぇなぁ」


葬式のような空気を出す二人に、土方は笑う。その場に笑い声とは違和感があったが、土方は気にしない。あくまで、副長に徹するのだった。


「放っておいてください! それより! 屯田さんの衝動はどうするんですか!? その問題を忘れてますよ!」


いつの間にか部屋に入った神谷が、畳みをバシンと叩く。すると沖田と近藤は、そう言えば……と、確実に失念していたようだ。


一方の土方は、「心配いらん」の一言。では、何がどう心配いらないのだと、神谷は土方に迫るのだった。



この会議が終わる気配は、いまだない――。


 

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