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□46
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ガサ、ガサッ


沖田は進む。


「……」


無言で、血の後を追いながら、

ただひたすらに進んで行ったのだった。



46:冗談?かもね



あれから何歩、進んだことだろう。

耳を澄ませれば戦の声が遠くで響き、
後ろを振り返れば照明役の明かりが大分小さく見えた。

しかし、それでもまだ草村だ。

いや、もう林の中と言った方が良いかもしれない。回りの木々はとうに身長を越し、遥か上まで伸びている。


完全に、先程とは別世界だった。


しかし、木々が伸びてくれたことで地面が見やすくなった。おかげで、血の後も追いやすい。

沖田はひたすら血を追った。すると、段々にその量が多くなっていることに気付いた。


近い。いや、ひょっとすれば


「……屯田さん……?」


必ずこの変にいるはずだ

そう思い、辺りをグルリと見回すが、誰もいない。おかしい、確かに血の臭いも濃くなっているのにと小首を傾げれば、目の前を何かが通った。


 スッ


「え?」


しかし、通ったと思えば……


 ドンッ


「えぇ!!?」


なんと、空から彩乃が降って来、沖田の目の前に落ちたのだった。恐らく、彩乃が木に登っていたのだろう。


「ちょ、屯田さん!?」


彩乃のその行為を、手負いの自分が敵に見つからないようにしたことだと合点がいった沖田。

しかし、それほどに神谷の代わりに受けた銃撃が酷いものなのかと余計に焦った。松明を下ろし、彩乃の様子を見る。


だが――――



「!!?」



沖田が見たのは、いつもの彩乃ではなかった。沖田の前、そこには、



『お、きた……組長……?』



「……屯田、さん……?」



『来ちゃっ……たんですね……』



そこには、髪の毛が白く目が紅い彩乃が、血まみれの状態でいたのだった。

もちろん、これは新゛撰゛組である彩乃の姿である。この姿を敵にも、もちろん味方にも見られたくなくて木の上にいたのだが、出血量が多いせいかふらつき、運の悪いことに沖田の目の前に落ちてしまったのだった。


実は、神谷に銃口が向けられたその時。彩乃は羅刹化をして、敵の目の前に出たのだ。


鉛弾を受け流す術を知らない彩乃は、では自分が的になろうとその身を照準に合わせたのだ。


羅刹になったのは、銃のスピードに追い付くためと、羅刹ならば心臓に当たらない限りしなないからだ。

しかし、弾が体に残るのは嫌だったため、わざと敵の目の前に出た。自分の体を貫通した流れ弾が神谷に向かないよう、浪士の手を操作してまで。

浪士の胸に一撃を浴びせたのは、その後である。


その後は必死だった。誰にも見つからないようにと、彩乃自身も恐れるほどの速さでここまで移動したのだ。


しかし、それも無意味に終わったが――


『沖田、組長……』


「……」


彩乃の呼び掛けに、沖田は返事をしない。いや、今は驚愕で何も出来ない、と言った方が正しいだろう。

困った彩乃が沖田の袴を引っ張ることで、やっと正気に戻ったのだ。


「……あ、す、みませ……」


『いえ、謝るのは……俺、です』


弾は貫通した。傷も前よりは塞がっている。しかし、弾傷も抜けた血も、今は彩乃に苦しみを与えていたのだった。



しかも、彩乃にとっては最悪の、もう一つの苦しみも――



『あ!!? く……っ!!』


「屯田さん!? き、傷を見せてください!!!」


撃たれている脇腹に手を掛けようとする沖田。しかし、彩乃はその手を掴んで止めさせた。


「は、離してください! このままじゃ、あなたが!!」


「死んじゃいます!」と、汗を何滴も垂らしながら、沖田は言う。その汗と必死な表情を見て、彩乃は薄く笑って囁いた。




殺してください、と――



 

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