PP×戯言

□三章
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『突然ですが、狡噛さんが撃たれました。いや、正確に言えば撃たれていました、ですけどね』

「は?」

『いや、私も急いで駆けつけたんですよ。けどね、間に合わなかったんですよ。着いた時には狡噛さんが常守監視官に撃たれていて、宜野座さんが彼女を凄く睨んでいました。凄く怖かったんですよ、般若のツラとはまさしくあのことを言うのだとつくづく私はそう感じ、』

「はあ!?狡噛くん、新人監視官に撃たれたの!?」

『あぁ、そっちですか。
そうですよ、撃たれました。というか、とっつぁんの証言だと、狡噛さんは気に食わなければ俺を撃て発言していたらしいですよ。それで実際撃たれているんだから、本当、素直って怖いですよね』

「狡噛くんは仮にも潜在犯よ、それを打つなんて……そのコ、何者?」

加えタバコのままニヤリと笑みを浮かべ聞いて来る、扇情的な格好をした金髪女性に、和音はさも、興味なさげにこう答えた。「知りません、常守朱という新人監視官です」と。

「アンタねぇ、そういうことじゃ……ていうか、今日はいつにも無く饒舌ね。どしたの?何か嫌なことでもあった?――あ、」

『……』

「失恋でもした?」

『……狡噛さんはこれからここに運ばれて来ます。大丈夫、ドミネーターなんですから、血とかは出ていませんよ』

「……ふぅん。
いや、逆にそれ(ドミネーター)だから問題なんだっつの」

そう言いながらフゥとため息をつく金髪女性は、公安局総合分析室の分析官で、公安局刑事課の捜査活動を支援する唐之杜志恩である。和音と同じ潜在犯だが医師免許を所持しており執行官の健康管理も行なっているため、執行官達に何かあれば必ずと言っていい程唐之杜の元へ運ばれて来る。今回の狡噛の件も、その一つだ。

「大体、ここに運んで来るなっつー話よね。ここは無料解放施設じゃなくてアタシの給料で賄われてんのよ」

『知ってます』

「なのに上の奴らはほら患者だ、ほら病人だって。面倒見るのも楽じゃないのよ?時には側にいるために徹夜だってあるぐらいなんだから。でもそれを文句言わずしてやってんだから、せめてもの労いとしてアタシの給料20倍くらい上げるべきじゃないかしら。ねぇ、そうは思わない?」

『そうですね、私もよくここに世話になっているのでなくなるのは困ります。なら、私から宜野座さんに話しつけておきますよ。唐之杜さんがその前髪が気になって仕方なく、隙あらば切ろうとしているということを』

「アナタ、支離滅裂っていう言葉知らないの?」

『唐之杜さんは長い物には巻かれろっていう言葉知ってますか?』

あぁ言えばこう言う、なんて可愛くない10歳だと唐之杜は思ったが、和音がこのようにペラペラ喋る日は嫌なことがあった日に決まっている。しかし和音を気遣って(自分が面倒なことに巻き込まれないため)、敢えて何も聞かない。

「で、そんな小姑みたいにネチネチ言うためにここに来たの?」

『……』

無言になる和音を見て煙を吐く唐之杜。「聞くことはしたくないけど」と一言漏らしたと思えば、遠くにいるドローンを側へ呼んだ。その中にあるドミネーターを「よいしょ」と和音同様重そうに持てば、ガチャリと和音へ向けた。

『狡噛さんを撃ったのは私じゃありません』

「は、誰が敵討ちなんてダサイことすんのよ。アンタそろそろ色相の検診でしょ?試しに測ってあげるから動かないで」

『……遠慮しま、』

「はーい、測定中〜。動かないで」

『……はぁ』

仕方なく、 和音は目を瞑り(測定に意味はないが)大人しくするのだった。
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