PP×戯言
□序章
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その少女は言った。
どうして私なんかが、と、
しかし、少女の目の前にいるコミッサちゃん
(公安局のマスコットキャラクターで可愛らしい容姿をしていている。その理由はストレスを与えずに検問や職質をするためらしいが、背の低い小さな子から見れば頭でっかちなその姿はどう見ても怖いだろう)
は言う。
あらら〜濁ってますね、と。
その言葉を、少女は反復する。
濁ってる?、と。
すると、コミッサちゃんも繰り返す。
えぇ、濁ってます、と。
少女は、今度はその言葉を言わなかった。ただ黙って聞き、ただ黙って半分ほど目を伏せる。
その姿を見て、コミッサちゃんも何も言わなかった。もちろん、ロボットなので少女のように目を伏せることは出来ないが。
『……』
「……」
少女が黙る。
コミッサちゃんも黙る。
その場には暫く沈黙が流れた。
しかし、ガチャリと音がすると同時に靴音が聞こえた。カツカツと鳴るその音はさぞ高級な革靴なのだろうと、少女は伏せた目をそのままに目玉だけを動かす。
しかし、そんな少女の頭にゴトリと重たい機物の切っ先が当てられる。機物の持ち主は言わずもがな近づいて来た革靴だ。
―犯罪係数オーバー○○。執行対象です―
「……」
―執行モード、リーサルエリミネーター。慎重に照準を定め、対象を排除してください―
「……なるほどな」
『……?』
革靴の男は言った。まるで何かに返事をするかのように、静かに頷いた。その言動に小首を傾げる少女。しかしその男は、少女の頭に押し付けていた機物をさらに強く押し付ける。
ゴリッ
『いっ、痛い……!』
少女は小さく悲鳴をあげるが男は知ったこっちゃないと、機物をそのままに口を開く。
「本当にイカレタ奴ってのはなぁ、嬢ちゃん。こう言った場面で痛いとか言わないもんだ。ただ黙ってそれを受け入れ大人しくしている素ぶりを見せる。するとまぁ、こっちの警戒というのも自然に緩んじまうもんなんだよ。だが、奴らはそこにつけ込むのが上手い。そうだなあ、今の
嬢ちゃんみたいにな」
『……っ』
この時、少女は自分の姿に眩暈がした。なぜなら今まで突きつけられていた銃を瞬時に奪い取り、それを革靴の男に向けているからだ。
コミッサちゃんはと言うと慌てている行動を取ってはいるが、その手に握られているのは紛れもなく今少女が握っている機物、ドミネーターと同じものだ。となるとコミッサちゃんもまた、少女の敵である。
すると少女は、そのことを認識した途端、目を、零れてしまう程最大限にかっぴらくのだった。