薄→風
□15
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「お、沖田先生〜! 笑わないでください!! 皆までー!!!!」
「あっはは! 神谷さんの顔!!」
「神谷ー! 頭たんこぶ出来てるぞー!」
「素振りまだ1000あるぜ〜!」
「おら、頑張れよ神谷ぁー!!」
『……』
「もうー!!
あれ、屯田さん? どうしたんですか?
もう面取ってもいいですよ、暑くないですか!?」
『……ッ』
15:今度こそ
神谷に面を取るように促されるが、彩乃は一向に応じない。それを不思議に思った沖田を始めとする一番隊だが、彩乃が次にした行動により、謎は更に深まる。
ガバッ
『一番隊の皆さん!!』
「「「「「「「!!?」」」」」」」
『先程の無礼、真に申し訳なく思います!! 本当は今この場で深くお詫びを申し上げたいのですが、少しの間先送らにさせていただきたく思います!!』
謝るにしても、先送りするにしてもいきなりなことのため、一同返事をしないまま無言でいた。しかし、その声色から何かを感じ取った沖田だけは、「分かりました」と返事をする。
「して、先送りにする理由とは?」
『はい……詫びよりも先に、沖田組長と試合をしたく思います』
「「「「「「えー!!?」」」」」」
「――良いでしょう」
一度は断られると思っていたのに、いきなりの承諾。彩乃は安堵して、礼を述べる。しかし、忘れてはいけない。沖田は機微に聡いのだ。
「今、面を取れとは言いません。しかし、邪念は捨て本気で掛からなければ、ただではすみませんよ?」
『!』
「……」
『有り難き幸せです』
「――いいえ」
その時、沖田が彩乃に笑いかけた。それは、例え少しだけでも、彩乃への信用が戻った証なのだろう。それ故か、沖田の笑顔が今の彩乃をも笑顔にさせるのだった。
「これより、沖田組長と屯田さんの試合を行います。両者、よろしいですか?」
『はい!』
「私も大丈夫です」
「では――始め!!」
ブワッ
「「「「「「!!?」」」」」」
始めの合図――
それは、この場を殺気で満たす合図に、他ならなかったのだった。