薄→風
□13
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「相田と屯田、どちらかが一本取るまで。審判は神谷が勤めます。両者良いですね」
「おう!」
『いつでも』
「では――始め!!」
13:死ぬよ
火蓋は、切って落とされた。
「きえぇー!!!!」
『――』
パァァアンンッッ
「「「「「「「!!!?」」」」」」」
「え!!?」
「……」
『……』
何が起こったか。それは目に見えなかったため分からない。しかし、ただ一つだけ確実なことが言えるのは、この試合は瞬きする間もなく終わった、ということである。
「神谷さん、勝敗は?」
「ハッ! い、一本!! 屯田!!!」
呆然としていた神谷に、沖田がコールを促す。すると、始まった時から一歩も動いていない彩乃が「ありがとうございました」と礼をした。
反対の相田は、今なお、何が起こったか分からない様だった。
「……」
自分は確かに屯田へ一本取りに行った、しかし――その後はどうした?
相田がこのように悩むのは、彩乃が剣を奮う尋常ではない速さと、相手の全てを見切った彩乃の目の賜物であった。
『次! 誰でも良いんでお願いします!!』
隊士は驚く。
沖田は笑う。
彼らはそれで良いのかもしれないが、彩乃は同じように悠長にしている暇はない。沖田から信用を取り戻すため、短い間にたくさんの相手から一本を取らなければいけないのだ。
『次!!!!』
まどろっこしかったため、目をかっ開いて怒号を飛ばす。すると流石斬り込み部隊。俺も俺もと、あっという間に挑戦者が列を作った。
「オリャァアアア!!」
スパンッ
「一本! 屯田!!」
「ヤァー!!!!」
ダンッ
「一本! 屯田!!」
「ヤロオオオー!!」
バァンッッ
「一本! 屯田!!」
『次!!!!』
その後の彩乃の凄いこと。
列を作っていた隊士は僅かな間に解散した。いや――彩乃によって、蹴散らされたのである。
「い、一本……屯田……」
最後尾にいた隊士が床と御対面する頃には、神谷の声もすっかり枯れ果ててしまっていた。しかしそれに凹たれることなく、防具をつけて、手に竹刀を持つ。
「沖田先生! 神谷、行って参ります!!」
「えぇ、楽しみにしてますよ」
精一杯出した声も、゛期待゛ではなく゛楽しみ゛と言われ、若干落ち込む神谷。しかし「お願いします!!」と彩乃に礼をし、闘志を燃やした。
「始め!」
復活した隊士が合図を掛ける。するとその場に男装同士――言い方を変えれば、女子同士の一本勝負が、始まったのであった。