鋼→青

□11
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「お、ステラ起きたかー! よく眠れたか?」


『……うん、まぁまぁね』


部屋を出ていた燐が戻ってくるなり開口一番、大きな声でステラへ話しかける。

その内容はステラを気遣ってのものだろうが肝心のステラからすると、もう少し声のボリュームを落とす配慮がほしかった、などとこっそり毒づく。

と、そんなことを知るはずもない燐は、朝ご飯が出来ているので食堂へ来いという。

雪男がいないため、まさか雪男が作ってくれたのかと問えば、頬をぽりぽりと掻いて「そうじゃねぇんだ」と燐。

『何か、あるの?』

燐の心情を汲み取るようにそう言ったステラだったが、燐の「行けばわかる」に説得されて黙って足を進める。

しかし、その間もキョロキョロと辺りを見渡せばあることに気づいた。

『えらく静かね……。朝ならもう少し賑やかでもいいんじゃないかしら?』

「え?」

『まるで私たちしかいないみたいだわ』

そう、あることとは、寮のひと気の無さだ。

実は昨日、燐と雪男はこの世界のことについては説明したが、なぜ自分たちとステラがいるかということについては話していない。

一気に話してもステラが混乱するから話さなかった、と言えば大分聞こえがいいが、この双子、単に言い忘れただけなので全く格好がつかない。

食堂へ行く道すがらに説明するのが調度良いと、燐は一詫びを入れて事情を話す。

「実はこの寮、俺と雪男だけなんだ。その他は……まぁ、行けばわかるけど……」

『?』

「と、とにかく! この寮は旧寮で、昨日いた他の奴らは新しい寮にいるんだ」

しどろもどろに話す燐に、

じゃあ何であなた達はここのままなのか、

ということをステラは聞きたかったが、その答えはきっと雪男が昨日話してくれた燐のことに繋がってるんだとなんとなくだが理解できた。

勝手にだが溜飲を下げ、「分かったわ」と微笑んでみせる。詮索しないステラに笑顔を見せる燐だが、この場に雪男がいればそんな兄にため息をついていることだろう。


安心するまでもなく、ステラにはもう全て知られているのだ、と。


『燐』

「ん、なんだよ?」

『……いえ。
ご飯、楽しみね』

「おう!」

何も疑いを持たず満面の笑みを浮かべる燐。そして、その笑顔を見たステラはニコリと微笑んで、二言目を口にするのだった――


11:悩めど笑えど
(燐の旧寮への処置は、カモフラージュがしやすいから)
(それと、あまり外へ出るなということもあるんだろうけど、
なぜだろう)

(彼からは、繋がれた鎖が全く見えない)

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