鋼→青

□09
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『で――

結局あなたは何が聞きたいのよ、雪男』

「……」


乙女の華麗な冗談も終わり、今は再び尋問の空気になっている(雪男だけ)。その空気に堪えられずかはたまた違う理由か、ステラは雪男に逆質問をする。

すると雪男の肩が少し跳ねたかと思えば、今度はため息と共に落ちて行く。ほんの些細な変化だが、ステラは見逃さなかった。見たと同時に「ハァ」とため息をつき、雪男の心中を嫌々ながらに察する。


『もういいわよ。どうせ私の言ったことが信じられないって腹なんでしょ? 私だって信じられないことだもん。他人が理解し得るわけがないよ』


「ステラ、俺らは!」


『いいよ、燐。私だって暫く考えたい。自分の状況……やっぱ信じられないもの』


「ステラ……」


燐は眉を下げてステラの状況を哀れんだが、雪男もこの間に頭の整理が出来たようで先程とは違う、幾分スッキリした顔でステラを見た。


「分かりました。では、僕たちは暫くここから出るので――」


『……』


「……夕食が出来たら呼びます。その後もこの部屋を使って構いませんので、今日は体を休ませてください。色々と大変だったでしょうから」


『……』

「雪男ッ!」


先程とは打って変わった対応に、燐も尻尾を振って喜ぶ。さすがは寛大な弟だ、か、いつもの狭量さはどこへ行ったか――そのどちらを思っているかは知らないが、どのみちの雪男の妥当な対応に満足し、燐は「良かったな」とステラに声を掛ける。

もちろんステラにとっても頭も体を休ませられる採算が取れるので雪男の発案は喜ばしいものだ。しかし、ステラは眉を顰めてさも不満ありげだ。


「まだ何か?」


それに気づいて雪男も眉を顰めるが、その数秒後には――


『分かってないなぁ』


その眉間山も、平らに戻る。


「は? 分かってない??」

「どういう意味だよ? ステラ」


『ん〜分かってないよ。話したじゃない。私らは兄弟。どんな時もあの二人と一緒だったの。もちろん、こうやって悩む時もね』

「ステラ……」

『でもその兄弟は今はいない。ただの、一人ぼっち』

「! まさか……」

『でも今目の前にはあなた達がいる! しかもちょうど二人の兄弟なんて、すごい偶然だよねッ』


この時燐は嬉しそうに頷いていたが、雪男はその表情を見て「馬鹿の面構え」だと罵った。ひどい弟だと思われるかもしれないが、それは間違いではない。


なぜなら――


『ね、一緒に悩んでよ。

こんなステキな運命差し置いて、みすみす私一人に悩まさせるっての?』


なぜなら、ステラが次にはく言葉がこういう類であることが雪男には読めていたからであった。

そしてもちろん、こうなることも予測済み。


「あぁ! 一緒に考えようぜ!! 大丈夫、こっちには雪男がついてんだ! 考えるなんておてのもんだっての!

な、雪男!!」


「お前が言うな」


『本当? 頼りにしてる、よろしくね〜』


「……」


ちょうどいいや
(ここでも兄弟なんて、皮肉だねぇ)

 

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