鋼→青
□05
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「名前はステラ・エルリック。錬金術なるものを会得しており、わずかな年齢にして国会錬金術師。
人格はまったくもって淡泊ながらその腕は確かで、今の所我々の敵という素振りも見せてはいない……
と、まあこんなもんですか?
奥村先生」
「はい」
「なるほどね〜」
「……」
旧男子寮で燐をステラの看病(という名の監視)をしろと言い付けて、自分は報告へと理事長室に足を運んでいた雪男。漏らすことなくやっと情報を伝え終えれば、メフィストは意外にもだんまりになってしまったためにしばらく無言が続いていた。
しかし機敏を感ずることに聡い雪男は、何も言わないメフィストの考えることなど分かっていた。もちろん悟られる失態を犯すメフィストでもないが、この件に関しては彼お得意のゲームがまだ思い付かないらしく、ありのままの素直な反応を雪男に見せていたのだ。
しかし何か面白いゲームでも思い付けばメフィストの行動は一気に水面下に降り、雪男に見せる顔もこのように素直なものではないだろう。
もっと歪んだ、悪魔のような顔をするのだ――
もっとも、彼自身がその身の上なので゛悪魔の顔゛は当たり前な上に、イマイチ迫力が出ないのだが……。
「今何か失礼なこと考えましたね?」
「何のことでしょう」
雪男を訝しげにに見るメフィストだが「ま、いいですよ」と言って、雪男に意見を求める。
「どう思いますか?」
「それは次元を移動したことですか?
それとも彼女自身のことですか?」
「両方です☆」
「……」
雪男は少し考えるようにした後、順を追うように自分の意見を述べる。
「彼女がこことは違う所から来たのは、間違いないと思います。錬金術と言えば昔のこと……それを楽々としてみせるとなれば、少なくとも錬金術が存在していないとおかしいですから」
「でもこの世界にはそんなものない。よって、彼女は飛ばされて来たと?」
「はい」
「なるほど、納得ですね☆
ではあの人の素性は?」
「敵……ではないと」
「ほう――?」
言葉を濁す雪男に、メフィストの眉も動く。その顔がとても楽しそうに見えたのは、きっと雪男の気のせいではない。