鋼→青
□03
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―エルリック兄弟を知っているか
―いいえ
このような会話をしたのは、生まれて初めてのことだった。
『え……知らないの?』
「知らない」
『……』
衝撃だった。
まさか自分達のことを知らない人物がいるなんて、と。そしてそれに伴い、ステラに二つの疑問が沸き上がる。それは――
この人達は一体誰なのだろうか。
いや、そもそもここはどこなのだろうか。
ステラは意を決して、聞いてみることにした。
『……ここって、セントラルよね?』
「へ? どこだ、そこ」
『え……アメストリス国じゃないの?』
「聞いたことないな」
『嘘……』
二度目の衝撃だった。
答えの予想としては、
”アメストリス”か”違う国”である。
だが、燐達はそのどちらともない答えを言った。「知らない」と。
『そんなこと……』
果たして有り得るのだろうか。
ステラは頭を抱える。
もしかして、と嫌な予感が頭を過ぎた。しかし、浮かんでは胸の奥までしまい込む。認めたくなかったのだ。
だが、そんなのは単なる悪あがきに過ぎない。事実は、変わらない。
『もう一つ……いいかしら?』
「何だよ?」
『これ……知ってる?』
言うや否や、ステラは腕を前に伸ばす。そして肘を少し曲げれば、勢いをつけて二本の指を擦り合わせた。
パチンッ
そして――
バチバチッバチッ
「な!?」
「何だ……これは……!?」
鋭い光が二人の目を突き刺した瞬間、ステラの体の周りにいくつもの稲妻が迸しったのだった。