犬→ぬら

□04
1ページ/9ページ



 その後、陽菜は膳を全て平らげた。時間は掛かってしまったが、それでも完食したのだ。

 そして、今はあることに悩んでいる。それは……


 『これ……持って行って返した方がいいよね……?』


 ”これ”とは、空っぽの膳と、首無が掛けてくれた羽織りである。だが、陽菜は台所がどこにあるかも知らなければ、首無がどこにいるかも分からない。それに、一応あの言葉も聞いている。


 ”中庭なら大丈夫か! 中庭でも散歩してて!”


 この言葉は、返せば”中庭以外はうろつくな”ということ。釘を刺された手前うろつくのもどうかと思ったが……


 『偵察は、必要でしょ』


 襖をこっそりと開けて、台所と首無を捜すのだった。



 さて、それから数分。陽菜は屋敷を練り歩いていたが、この数分であることに気づく。


 『ねぇ、何でこんなに妖怪の気配が強いの?』


 それはいつしか花開院ゆらも感じていたことだった。

 姿は見えないが、気配がある。それはまさしく、妖怪が隠れているということを指していた。

 『困ったなぁ。弓矢は背中にあるけど、膳で両手が塞がっちゃってるし……襲われたらどうしよう』

 半ば洒落にならないことを言いながら歩く。言った通り、弓矢はベッドの横にあったため今は装着している。何かあった時の護身用だ。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ