犬→ぬら

□02
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 さて、こちらは世界を跨ぎ別世界。


 その世界の内の一つ、誰かには妖怪屋敷と呼ばれるその家に、今、たくさんの人ならぬ”何か”がひしめき合っていた。

 それはきっと普通の人が見たらお化け屋敷のセットの一部と思うか、ただ目が霞んで見えただけなのかと思うはずだ。


 そう。それほどまでにその”何か”は珍妙で、異様――



 「その大義……俺が果たしてやる」



 桜が舞い散る中に、その男は現れた。先程までいた気の弱そうな男ではなく、少しの色香を含んだ、目つきの鋭い美少年である。
 しかし、単なる美少年ではない。

 その頭を見てもらえると分かる通り、少年の髪は重力に逆らって伸びている。下にあるべき髪の毛が、横へと。


 「あなた様は……」


 少年の姿を初めて見る化猫組頭首・良太猫。敵に自分の仲間を散々に食われながらも命からがら逃げ切り、この家へ運ばれた。そして回復もそこそこに仲間の敵打ちと零し、今すぐにでも戦地に赴こうとする。

 良太猫を止めようにもその意志は固く、例え勝負に負けると分かっていても踏み出す足は止まらない。ボロボロになった体を引きずって動かした。

 しかし、その姿を見てこの少年の血か騒ぐ。体の中に四分の一しか流れていないが、それでいても濃い、大妖怪の血が。



 「夜明けまでに、鼠狩りだ」



 そこにはまだ若さ故の幼さが垣間見えるが、しかし立派なぬらりひょんの孫・奴良リクオの姿があった。

 リクオは覚醒したことを喜ぶ仲間に一笑し、足を動かす。そしてたくさんの妖怪を従わせ、百鬼夜行の先陣をきるのだった。

 
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