銀→青

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そんな翼が理由として挙げたのは、それはそれは月並みなものだった。


『こ、転んだんです! 階段で!!』


「……転んだ?」


さすがの燐もここは疑う。


翼はバレないように、勢いそのままに話す。


『ちょ、ちょっとよそ見してたら、あーって!!』


「……あー?」


『はい!!』


「……」


『……』


バレるだろうか。

そりゃそうだろう。


こんな説明で納得する者がいれば、それは余程の、


「そっか! 大変だったな、痛ぇだろ?


にしても、また派手に転んだな!!」


『あ、はははは!』


燐は、余程の騙されやすさを兼ね備えた人物であった。


しかし物事が穏便に進んでくれて助かる翼。


シュラは塾生の山田であるため、この話をすること自体、躊躇われていたのだ。


『その時までは……』


「ん? 何か言ったか?」


『! いえ、何もっ。


それより、これから塾ですよね? 私今日見学させていただこうと思ってるんです!


良ければ、ご一緒に』


ニコリと笑う翼に、燐は胸が高まった。


しかしそれを隠すように振る舞い、鍵を出す。


そして、


「翼いねー間に一人増えたんだ! 杜山しえみってんだけどよー」


と話しをしながら、ドアの向こうへ続く塾へと、足を伸ばしたのだった。

 
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