犬→ぬら

□04
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 カチャ


 離せば瞬間に、陽菜は背負っている弓矢を構える。それはもう、一瞬で。


 相手は強そうながらも動きは鈍そうだ。ならばこちらが一、二矢打って脅せば、帰る方法くらいは吐いてくれるかもしれない


 陽菜はそう思いながら、狙いを定める。先程ぬらりひょんが座っていた場所一帯を、射程範囲にしようとした。


 だが――


 『な!? いない……っ』


 前を見れば既にぬらりひょんはおらず、影も形もない。では一体どこへ行ったのだろうかと辺りを見回すが、それでも見つからない。


 ならば、もしかすれば逃げたのかもしれない。それならば後は自力で出口を探すだけと、陽菜は矢を仕舞おうとする。


 その時だった。


 「ほれ。膳が危なかったぞ」


 『!?』


 ぬらりひょんはいつの間にか陽菜の横に立っており、尚且つ、陽菜が落とした膳を代わりに持っているのだった。


 『い、つの間に……』


 矢を最後まで仕舞い、ぬらりひょんを見る。その目は驚きで満ちていた。そんな陽菜を見て、ぬらりひょんは老人特有の柔らかい笑みを浮かべる。


 「お前さんの言ってることは分からんが、わしのことを話すのならばわしは確かに妖怪じゃ」


 『!』


 「が、別にお前さんを取って食おう等とは思っとらん。のらりくらりと、ただ生きておるだけじゃ」


 陽菜が驚いていているのを尻目に、ぬらりひょんは眈眈と話す。最後には、「これでいいかの」とまた笑みを浮かべた。


 
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