銀→青
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一方、その様子を見ていた燐たちは、ただ黙るしかなかった。
空気を読んで、というわけではない。ただ、翼たちを覆う空気が口を開かせなかったのだ。
最も、翼の事情を知らない勝呂たちは訳が分からないようだが。
こんな時にシュラがいれば、何か変わったのかもしれない。が、あいにくシュラはもう”山田”ではなく、シュラとして過ごしていて、この場にはいない。
もちろん、雪男も塾生ではないためこの場にはいなかった。
と、その時。
「り……燐……」
しえみが不安げな声で、燐の制服を引っ張った。幸い、筋トレをしていたために塾生はひとところに集まっている。
しかもそれが翼の後ろにいることで、より不幸中の幸いに繋がったのだ。
話しを戻して、
しえみに呼ばれた燐は、「お、おぅ」と意味の持たない返事をする。しかし、自分はいつでも飛び出していけるようにと、手に持つ木刀に力を入れるのだった。
こんな時に木刀かよ、と燐は思う。が、仕方ない。シュラに降魔剣を預かられた今、自分の武器はこれしかないのだ。
小さく「チッ」とした音は、すぐ近くにいたメフィストにも聞こえていた。
「……」
メフィストは机の合間をぬって、こっそりと移動する。移動先は、燐と二人で内緒話が出来る所だ。
「落ち着きなさい。翼がどうかなる前に、あなたの炎が出ますよ」
「!」
炎が出る可能性を忘れていた燐。メフィストを恨めしげに見るが、大人しく熱を覚ます。