銀→青
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想像が事実とイコールで結び付くなど、そうそう起こることではないのであった。
その証拠に、
「万斉」
『!?』
「俺の歌には、ノれねーか」
『っ!』
現実は、想像を越えていく。
翼の表情を見る万斉。ニヤリと笑ってわざとらしく話す。
「こっちに面白いものがあったでござる。それに参加するのも、悪くないでござろう。
晋助」
『……っ』
耳を澄ませば、聞こえる聞こえる。
三味線を置く音。布が擦り切れる音。こちらに近づかんとする足音。
そして、見える。
「ほぉ」
派手な着物を着、左眼に包帯をした男。
すなわち――
『高杉、晋助……っ』
予想していなかった、いや、予想したくなかったことが、今目の前で起こっている。
鬼兵隊トップツーが、今、力を失った翼の前に大きく立ちはだかっているのだ。
『……』
カチャ
翼は震える手を抑え、愛刀を腰から抜いた。
その行動を一部始終見ていた高杉。ニッと笑い、キセルを口から離す。
「お前、神崎翼か。あれから行方知らずと風の噂で聞いたが……。
どうやらこんなとこにいたせいで、せっかく磨いた牙も丸くなったみてぇだな」
『……っ』
翼は何も言い返せない中、体勢だけを低くした。